『深層風景』
河村亨一
白い砂浜にいた ただ広い広い...
膝を抱え 瞳を閉じ 穏やかな波の音だけを聴いていた
誰もいない 誰も来ない
とても静かで 白く霧の掛かった目の前の海は
いつも灰色に見えていた
浅い夢で見る景色は
ずっと知らない場所を映し続ける
君を想う まだ知らない君
外からは見えないはずの海辺に
一人の少女が現れる幻想
ずっとずっと誰も気付かない海辺に
いつも風は透明で 僕に優しく触れていた
白い砂は 少年のままの僕に
全ての物質は いつも砂に還るのだとおしえていた
ここではあらゆるものに 調和がとれ
何不自由なく この場所を調律していた
誰もいない誰も来ない砂浜
そこで僕は全てを理解し
ここから 世界を見つめていた
僕だけの この場所は
いつも変わらずに僕を包んでくれている
何者にも けして触れられない
僕は空想に耽る。
『少女と出逢う・・・』
白昼夢。
『僕に微笑いかける・・・』
長い長い夢。
『言葉が触れ合う・・・』
いつもと変わらない夢。
『この隣に君が・・・』
叶わない夢は夢のまま。
繰り返し繰り返し
そして僕は 誰も訪れることのないはずの砂浜で
ある日 突然
君と出逢ったんだ・・・
2012年頃